11月21日 The Final

明けて,21日.もはや帰国の日です.幸い午後の飛行機なので,もう1度ぐらいなら観れそうです.この日,ソウルの朝は冷え込んで濃霧の中に街が沈んでいました.朝食後タクシーに乗って昨日と同じミョンボプラザに行きました.ホテルの近くのソウル劇場でも上映してましたので違う場所で観るのも悪くなかったのですが,こちらは初回上映開始時間が11時30分.大事を取ってミョンボにしました.」
日曜日の朝のせいか窓口に並んでいる客は20名程度でした.やはり韓国では午前中の客入りは悪いみたいです.結局かなり空席が目立つような状態でした.おおよそ7割くらいの入りでしたが,劇場のロビーでは Love Letter のサントラが流れ可愛らしいカップルの姿がいくつも見受けられます.
しかし Love Letter は韓国の観客に熱狂的に受け入れられたと言えるでしょう.観客の反応はものすごく良くて,一瞬「Love Letter ってコメディーだったっけ?」と思うほどでした.

まず,マヨネーズギャグで大きな笑いが起きてからは「くまさん」演じるおじいちゃんが出てくるたびに笑いが起こりました.阿部粕さんが迎えに来るシーンで種蒔きをするおじいちゃんの姿に爆笑,引っ越しを渋々承諾するシーンで爆笑,とにかくあのキャラは受けてました.

特に笑いを取ったキャラは蘭々の「及川早苗」でした.自転車置き場を立ち去るシーンで大爆笑,更衣室で髪をとかすシーンでも大爆笑,「あなたはここで結構よ」では笑いとともに「わーっ」という歓声の様なものさえ聴こえました.

もちろん、日本で受けていたシーンも同様に大受けでした.例えば
  •  相々傘
  • 「藤井樹熱いね」
  • 「藤井樹ハート藤井樹」(黒板を見てひときわ大きな笑い声が聴こえました)
  • 「藤井樹ストレートフラッシュ」
  • 「前田先輩」(ほとんどヒステリックなくらいの笑いがありました)
などなど.ところが日本人の感覚からするとやや不思議な反応もありました.

  • 「国道の上にでも住んどるのかな?」で爆笑.
  • 27点のところで爆笑.
  • 宮崎美子のイラストで爆笑.(意味が判ってるとは思えないんだけど)
さらに意外だったのは,
  • 博子のセリフを受けて樹の母親(藤井安代)が思わず嗚咽をもらすシーンで大爆笑.
    日本人の感覚では、ここは泣きのシーンのはずなのですが.

  • 「結構クレージーやな、俺達」が,ほとんどと言うか,まったく受けない.
    (でも、これは字幕の問題のような気もする..)


  • 図書委員選挙の後,少年樹がクラスメートを蹴飛ばして数秒立ち止まった後,教室を出ようと体の向きを変えた瞬間大爆笑が起こりました.
    (この笑いの意味が判らず一緒に観ていて一番不思議でしたね)

  • それから博子の「お元気ですか〜」のシーン,はたして,このシーンがどれくらい涙を誘ったのか,よく判りませんでした.一部には多少白けたようなリアクションすらあったようにも感じましたが,私の気のせいだといいのですけど..
ただ観客は字幕を通して観ているわけですから,ある程度までは仕方がないですよね.ラストシーンも字幕では「この手紙は悲しすぎて(せつなくて?)出せません」というニュアンスに変わっているそうです.でも、すでに日本でも報道されているように大盛況で大人気なことは間違いないです.TV CM が放映中止になるというアクシデントもあったのですが,そんなこととは関係なく今のソウルの若者は楽しいものをごく素直に楽しんでくれています.

Love Letter を紹介する新聞記事。
8年前初めてソウルを訪れたときには,まだ延世大学で学生と機動隊が衝突して催涙ガスが充満し目や口がヒリヒリ痛んだのをよく覚えていますが,今回は,IMF 危機の影響もほとんど見られず街を行く人々の顔がひたすら明るいのが印象的でした.民主的な政府が成立してから10年余り.社会が安定し自由な空気が横溢することの効果がじわじわと現れているように思いました.
これからは韓国はもっと発展するでしょう.Love Letter の公開を実現したことにそれは示されています.そして,もう2度と劇場で観ることがない,と思っていたこの映画をもう1度観せてくれた日本と韓国のすべての関係者に感謝します.素晴らしい思い出とともに夕刻帰国の途についたのでした.




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